最近、一冊の本がものすごく売れているのというのを新聞で読んだ、と
ママうえが言っていました。
ワカドリ、俄然興味が湧いて、早速本屋さんでゲットしました。
「ペスト」カミュ著
カミュといえば、「異邦人」。それは読んだことあるんですが、「ペスト」は未読です。
では早速読んでいきましょ〜〜。
ざっくりと大まかなあらすじ
アルジェリアのオラン市で、医者のリウーは、ネズミの死体を発見する。
そのネズミの死体は日々増えていき、やがては原因不明の熱病患者が続出。
それがペストと判明すると、市は封鎖に踏み切る。
そして、
医師のリウーはジャン・タルー、作家志望の小役人グランなども加わった「保健隊」を結成し、
医者を助ける活動を始める。
しかし、孤立した市民は不安と孤立感を募らせていく。
封鎖された市から違法に脱出しようと画策していた記者ランベール。
「ペストは不信仰からおこったこと」だと説教するパヌルー神父。
幼い息子をペストで亡くした予審判事オトン氏。様々な人間の思案や思想が語られていく。
やがて、ペストは終息し、約10ヶ月ぶりに市は封鎖を解かれた。
ストーリーとしてはこんな感じでした。
こうやって書いてみると案外あっさりしています。
「ペスト」の面白かったなあと思ったところ
それぞれのキャラクターの想いが不器用で不完全で、
「ああ〜人間ってやつは・・」的な感じなので、かなり等身大というか。
そこが、今の「コロナ禍」を彷彿とさせているんだと思います。
パリから来ていた新聞記者のランベールが、リウー医師に
「この街を出たい。自分はここの人間じゃない。
だから、わたしがペストにかかっていないという証明を書いて欲しい」と頼み、
「僕がその証明書を書いたところでなんの役にも立たないでしょう(略
もう今からはお気の毒でもあなたもここの者になるんです。世間のみんなと同じようにね」
・・とキッパリ言ったリウー医師に対し、
「そうなりゃもう人道問題だぞ!」と興奮するランベールや、
登場人物とは関係ない、ペストに侵されていく封鎖された市内での出来事を書いたシーンで、
「俺はペストだ〜」と叫び、街を歩く娘に抱きついたおっさんがいたっていうのとか・・。
まじ寒気しました。
すごく心に残ったひとこと
そんなかなりリアルな現実の中でも時折登場人物が言う言葉に、何度かハッとさせられました。
特に、
「ペストと戦う唯一の方法は誠実さということです。一般にはどういうことかわかりませんがね。
しかし、僕の場合には、つまり自分の職務を果たすことだと心得ています」
・・というリウー医師の言葉でした。
実際、リウー医師は、やっと友情を分かり合えた盟友タルーがペストに侵されても、
取り乱さず黙々と治療にあたり、そして最後を看取りました。
リウーの思案は、ペストが終息した後、綴られていますが、淡々としていてそれもまた切ない。
印象に残ったシーン
医師リウーとタルーが、友情を確かめ合い、夜、海で一緒に泳ぐ場面。
めっちゃ美しすぎる。そして悲しい。
読み終わって
物語の終盤、ペストもあっさりと収束してしまうし、それがなぜなのかもわかりません。
そして、作品の中で語られる思想などが、素晴らしいとは言い難い(笑笑
小説にエンタメを求めているならば、高嶋哲夫著「首都感染」の方が面白いです。
だけど、いい意味で裏切られました。
不条理な出来事はいつでもふりかかる。
そんな中でも、各登場人物はその人となりに、「不条理さ」と向き合い戦っている。
その姿ははっきり言って不器用だし、不完全すぎるけど、でもそれが人間なんだなあ。
全体的に文章は難解で、意味が分からず、途中何度か読み返した箇所もありますが、
すごく面白かったです!
病院の待合室で、読み耽りすぎて、番号呼ばれてるのに全く気づかなかった(笑笑
解除されても、心にとめておきたい「ペスト」の最後の一説
ペスト菌は決して消滅することはないものであり、
数十年の間、家具や下着類のなかに眠りつつ生存することができ、
部屋や穴倉やトランクやハンカチや反古の中に辛抱強く待ち続けている(以下略
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